Class of 2024 のしゅんです。怱々たるTerm 1がようやく落ち着いたため、11月に行ってきましたZürich Trekのご報告をさせていただきます。
今回のZürich Trekは、Finance Clubがキャリアチームと手を組み企画されたもので、11月24-25日(木-金)で行われました。ESADEでは年間を通して多くのTrekが企画されており、週末の休みに接続するような形で企画されることが多いようです。Trek期間中は、学校の必修授業もないためため、学生にとってはありがたい休みの期間になります。当方は帯同の妻と子供もスイスに連れていき、26-27(土-日)はチョコレートやクリスマスマーケットなど観光を楽しんでいました。
そもそもスイスはなぜ国際金融国となったのか?。これは、中世ヨーロッパにさかのぼると言われています。貧しい土地柄にもかかわらず人口が過剰気味にあったスイスは、ヨーロッパ各地で戦争が勃発する中、傭兵ビジネスで外貨を獲得していました。稼いだ外貨には当時不正に得た資金も含まれていたことから、秘匿性の高い資産管理が必要となり、プライベートバンキングビジネスが始まったとされます。1815年にはウィーン会議にて永世中立国としてスイスが認められ、戦時下で永世中立国という稀なポジショニングを取ることで世界から資金を集めました。
世界の金融ビジネスをリードするスイスにて今何が起きているのか?。 Zürich Trekを通じて見えてきたのは、(得にソーシャルインパクトに関わる)プライベート投資ビジネスの勃興でした。以下では訪問した6社の概要を示していますが、うち4社はプライベート投資ビジネスにかかわるものでした。多くの会社でESADEの卒業生がおり、非常に親切に案内していただきました。
■Partners Group
エクイティ・デッド・不動産・インフラストラクチャーに約1,850億ドルに投資する世界をリードするプライベート投資ファームの1つです。東京にも支社を設けています。Trek初日の朝にZürich中心部から1時間弱電車に揺られながら、本社に訪問しました(プライベート投資は必ずしも金融都市のど真ん中にオフィスを必要としないのは特徴なのかもしれません)。同社の事業内容や採用募集情報に加えて、いかにして投資先のビジネスに付加価値をつけて他社に引き渡すか(投資リターンを獲得するか)の観点でケーススタディを行い、勉強させていただきました。
■Zurich Insurance Group
日本でもお馴染みの世界大手の損害保険会社です。今年は同社の創立から150年の年にあたり、エントランスでは大きくポスターが掲げられていました。訪問の際にはまず、同社の設立から今日までの変遷をお教えいただきました。特に、1880年ごろに手書きで書かれたバランスシートが実物として出てきたのが印象深かったです。その後は、多様なセグメントからお忙しい中、プレゼンテーションをしていただき、同社ビジネスの案内がありました。インパクト投資を投資ポートフォリオに組み入れており、多くのプライベート投資ファームへの投資委託も行っているようです。Trek初日の夜には、同社の社員の方々とのネットワーキングの機会もありました。
■BlueOrchard
同社は、2001年に国連主導で行われた世界初のマイクロファイナンス債権投資マネージャーとして設立されました。現在では、クレジット、プライベートエクイティ、サステナブルインフラストラクチャーなどに投資を行い、政府系年金基金や大手保険会社などからソーシャルインパクト投資の受託を受けています。オフィスは決して大きなものではありませんでしたが、まるでスタートアップ企業のような専門知識を有した少数精鋭で熱意に溢れた社員の方々が説明していただいたのが印象に残っています。
■SUSI Partners AG
持続可能なエネルギーインフラを構築するためプライベートエクイティおよびクレジット投資の機会を提供する、2009年に発足したスイス発のファンドマネージャーです。同社訪問時には、世界のトップMBAスクールを卒業された社員の方々も多く見られました。同社の事業内容を紹介いただいた際には、様々なエネルギーインフラへの投資およびバリュエーションの際に、どのような側面を考慮すべきかを考えるケーススタディの機会があり、大変参考になりました。
■UBS
ウェルス・マネジメント、投資銀行業務、資産運用、資本市場金融サービスを提供する世界大手の金融機関です。スイスのプライベートバンキングビジネスといえば、同社を外すことはできないでしょう。富豪層個人投資家の投資ニーズも近年変化しており、インパクト投資に関連した商品の提供を同社は拡大しています。
■responsibility Investments AG
同社は新興国の民間向けに融資を行う、プライベートエクイティおよびデッドの投資機会を提供しており、政府系年金基金や保険会社を顧客としています。事業内容を紹介いただいたのち、Q&Aやネットワーキングのセッションにて社員の方々と議論する機会がありました。
特に気になっていたのが、ソーシャルインパクト投資需要は高まっているものの、あらゆる運用機関が同マーケットに進出することによって、ブルーオーシャンからレッドオーシャンに転じないのか?、転じるならばいつ起こりえるのか?でした。彼らの返答としては、ブルーオーシャンはかなり先まで続き得、業界としてソーシャルインパクト投資に新しい基準を組み入れることでホライゾンを広げていけるとのことでした。また同業他社との競争については、新興市場をはじめとする独自のネットワークこそが差別化につながるとのことでした。
いかがだったでしょうか。今回のTrekに参加したESADE生は12人ほど。必ずしも皆がファイナンスのバックグラウンドにあるわけではなく、ソーシャルインパクトに興味があるから来た、金融業界に転身したいなど動機は様々です。またファイナンスに限らず、ヘルスケアやテック、コンサルティングなど多様な業種のTrekが企画されています。関心のあるものにぜひ参加みてはいかがでしょうか。
コメントをお書きください